先日、知人からこのような話を聞いた。
ある日、知人が仕事で外出した時のこと、リクルートスーツ姿の学生らしき女性が あせった様子で道をうろうろしていた。
ちょうど学生が就活にとりかかる時期であったので、面接場所にたどり着けないでいるのだろうと察した知人は女性に声をかけた。聞けば、案の定、これから面接に行くところで道に迷ってしまったのだという。
一緒に探してやろうと彼女の持っていた地図を見たところ、その場から目と鼻の先だったのでそこまで連れて行ってやった。面接時間5分前にその場に到着し、女性は何度もお礼を言って面接場に駆け込んでいった。
1週間後、知人の職場のデスクの上に1通の封筒が置いてあった。その女性からである。
知人は女性に道を案内してやったとき名前を聞かれたが、照れくさかったので?自分の会社を指さして「そこの会社で採用を担当している者」と名乗ったのだそうだ。後日女性がその場所をネットで調べて“人事課採用担当者様宛”にお礼状を書いて郵送したのだ。
女性が面接場所をちゃんと確認しなかったことは置いておいて(お礼状をきっかけにあわよくば知人の会社に就職できるかもと考えたかもしれないことも置いておいて)
こんな学生もいるのだな、と感心した。
多くの人はわざわざお礼しようなどと思わないだろう。また、今時ネットで企業のホームページを見ればメールのアドレスだって載っているにもかかわらず、あえて「手紙」でお礼の気持ちを伝えるという女性の行動は、とても人間らしくて素敵なことだ。手紙は手書きだったという。知人は思わぬ形でお礼が来て大変喜んでいた。
人間関係が希薄なこの時代、例え人から親切を受けてもそれっきりということは多い。そんな中、二十歳そこそこの若者が「感謝の心」や「人情」をこのように表現できるということが垣間見れて、とても喜ばしい気分である。
お礼状から察するに、面接の結果は喜ばしいものではなかったようだが、次こそ頑張れと遠くからエールを送りたいと思う。 rm